今後ますますAI技術が成長すると見込まれる中、コンピューターでは代替できない能力の1つとしてリーダーシップが注目されています。この記事では、リーダーシップ開発の意味やリーダーシップの種類、またリーダーシップ開発の手法やリーダーシップ開発でよくある勘違いなどについて解説していきます。CLOSE
目次
リーダーシップ開発とは
リーダーシップ開発は、組織やチームのメンバーが持つ「リーダーシップ」とされるスキルや能力を向上させる取り組みです。具体的には、主体性や自律性、責任感、オーナーシップなどを強化します。リーダーシップに必要なスキルや能力はさまざまですが、大まかに分類すると、次の7つが挙げられます。
①目標設定能力:メンバーの最大限のパフォーマンスを引き出せる目標を設定する力
②情報収集力:ありとあらゆる情報の中から質の高い情報を集める力
③コミュニケーション力:言語/非言語により職場の雰囲気や他者との協働関係をつくる力
④業務遂行力:メンバーを牽引するだけではなく実際に業務を進めることができる力
⑤判断力:何が正解かわからなくても感情的にならず論理的かつ客観的に判断できる力
⑥意志力:途中で苦境に立つことがあっても最後まで諦めずにやり遂げる力
⑦育成能力:チームの成果を最大化するためにメンバー1人ひとりを成長させる力
リーダーシップ開発が注目されている背景
なぜ今、リーダーシップ開発が注目されているのでしょうか?その背景には、VUCAと呼ばれる先が読めない激しい時代の変化と、著しい経済成長を終えた成熟社会での仕事観や人生観の変化が挙げられます。その具体的な理由について確認していきましょう。
役職に関係なくリーダーシップが求められるようになった
これまではリーダーと呼ばれる役職の人がリーダーシップのスキルや能力を身につけ、組織やチームをまとめていくという考え方がありました。経験豊富で優秀なリーダーが正解を知っており、それに従うという考え方です。しかし、現在のような変化の激しい時代では、正解が一つとは限りません。正解が何かわからない時代では、役職に関係なく、誰もがリーダーシップを発揮し、チームや組織の成果を向上させる必要があります。
働きがいや生き甲斐がわかりにくい時代になった
資本主義社会の中で経済が成長している時代は、「より豊かになること」が働きがいや生き甲斐となっていました。しかし、経済が成長し物質的な豊かさに満たされた近年では、経済的な豊かさが働きがいや生き甲斐に結びつかないことも多く、「何のために働いているのか?生きているのか?」に悩む人が増えています。そのため、外から与えられる報酬(外発的動機付け)ではなく、自分自身の内側から湧いてくる志や想い(内発的動機付け)から働きがいや生き甲斐を見つけることが必要となってきているのです。
多様な価値観があふれるようになった
成熟社会では経済的な豊かさが絶対的な価値観ではなく、多様な価値観であふれています。これまでの組織やチームでは、所属するメンバーの価値観はほとんど同じでした。しかし近年ではメンバー1人ひとりの価値観が異なることも多く、リーダーには価値観が多様なメンバーをチームや組織としてまとめるスキルや能力が求められているのです。
人生100年時代に対応するため
リーダーシップ開発は、今取り組んでいるプロジェクトを円滑に進めるために必要なだけではありません。人生100年時代といわれる近年では、定年退職後の自分自身の人生についても、リーダーシップを発揮することが求められています。つまり、仕事を通じて身につけるリーダーシップのスキルや能力で、自分の人生も設計し切り拓いていくことが求められているのです。
リーダーシップ開発でよくある勘違い
リーダーシップ開発を考えるときによくある勘違いについて、ここでは2つ紹介します。これらを知ることで、リーダーシップ開発での失敗を未然に防ぐことに繋がるでしょう。
リーダーシップとマネジメントは違う
リーダーシップとマネジメントは、組織の成果を向上させるという目的は同じですが、異なる能力を指します。リーダーシップは組織の目標達成のためにメンバーを導く能力であり、一方、マネジメントは組織が成果を上げるための方法を考え、組織を管理する能力です。マネージャーや部長などの管理職では、リーダーシップとマネジメントの両方が求められます。管理職でなくても、リーダーシップは重要ですが、マネジメント能力は必ずしも必要ではありません。
リーダーとリーダーシップは違う
有名な経営学者であるピーター・ドラッカーはリーダーシップの本質について、天性のものではなく後天的に身につけるものであると述べています。つまり、リーダーシップは立場や役職に関わらず発揮できるということです。例えば「役割」と「あり方」の2軸でリーダーとリーダーシップを整理すると図のようになり、リーダーでなくても(フォロワーでも)リーダーシップは発揮することが可能です。
リーダーシップの種類
リーダーシップにはいろいろな分類方法がありますが、ここではアメリカの心理学者であるダニエル・ゴールマンが提唱した6種類のリーダーシップスタイルを紹介します。
- ビジョン型リーダーシップ
- コーチ型リーダーシップ
- 関係重視型リーダーシップ
- 民主型リーダーシップ
- 実力型リーダーシップ
- 強制型リーダーシップ
① ビジョン型リーダーシップ
ビジョン型リーダーシップは、リーダーが目指すべきビジョンを示し、その実現に向けてチーム全体が協力して取り組むスタイルです。
このアプローチでは、リーダーは具体的な方法や手段を押し付けるのではなく、メンバーの自主性を尊重します。このようなスタイルは、メンバーが組織に強い帰属意識を持つよう促すため、企業の成長期によく適用されます。企業の規模に関係なく、大きな目標を達成する必要がある場合に効果的です。
ただし、ビジョン型リーダーシップを成功させるには、リーダー自身が揺るぎない信念や熱意を持っていることが重要です。
② コーチ型リーダーシップ
コーチ型リーダーシップは、リーダーが一人ひとりのメンバーと密接な関係を築き、個別にコーチングしながら進めるスタイルです。
このアプローチでは、各メンバーの目標や個性、価値観を尊重し、彼らに合った支援を提供することが特徴です。このスタイルは、実務経験豊富な組織や、メンバーが主体性を持っている組織に適しており、個々のモチベーションを高く保ちながら組織目標に向かって進むことができます。
ただし、リーダーが常に全員のメンバーに目を光らせることは難しく、リーダーに負担をかける可能性があります。
③ 関係重視型リーダーシップ
関係重視型リーダーシップは、メンバー同士の関係や感情を大切にするスタイルです。各メンバーの人間関係を円滑に保ち、チーム全体の信頼関係を築くことが重要です。
このアプローチは、さまざまな役割を持つメンバーが協力してプロジェクトを進める場合に役立ちます。また、チーム内の関係や信頼が崩れた際に修復するのにも有効です。
ただし、関係性に重点を置きすぎると、組織の目標達成がおろそかになる恐れがあるため、注意が必要です。
④ 民主型リーダーシップ
民主的なリーダーシップは、様々なメンバーから意見を集め、共通の目標達成や問題解決に向けた提案を行い、合意を形成しながら作業を進めるスタイルです。リーダーはメンバーと同じ目線で物事を考え、良好な関係を築くことも大切です。
このアプローチは、複雑な課題やリーダー単独では解決できない場合に有効であり、新しい事業や業務プロセスの改革など、多様なアイデアが必要な時にも効果的です。
ただし、民主的なリーダーシップでは、リーダーが一人で決定するのではなく、メンバーの意見を取り入れて決定を下すため、各メンバーが高い能力と自律性を持っていることが重要です。
⑤ 実力型リーダーシップ
実力型リーダーシップは、リーダーが自ら実務能力に秀でており、組織をリードする優れたパフォーマンスを示すスタイルです。
リーダーがトップのプレイヤーであるため、メンバーからの信頼を得やすく、組織全体のパフォーマンス向上に貢献します。特に、営業部門や開発部門など、個人のスキルや経験が直接成果に影響する部門やチームに有効です。
ただし、リーダーが最前線で活躍するため、人材育成が難しくなるという課題もあります。
⑥ 強制型リーダーシップ
強制型リーダーシップは、上司が部下に対して強い指示や命令を与える、トップダウンのスタイルです。他のリーダーシップスタイルが効果を発揮しない場合や、災害時など迅速な決定が必要な時に役立ちます。
強制型リーダーシップは、業務をスムーズに進めるメリットがありますが、メンバーのモチベーション低下や離職率の上昇などの問題も引き起こす可能性があります。そのため、特定の状況や緊急時に限って利用することが適切です。
以上、6種類のリーダーシップについて説明しました。どのリーダーシップスタイルが正しい、または誤っていると一概に判断することはできず、組織の現状や特性、さらには時代や市場の変化などに応じて使い分けることが重要です。
リーダーシップ開発の方法
リーダーシップ開発の方法として、研修形式で行うことが効果的です。ただし、研修をやみくもに行うだけで、リーダーシップのスキルや能力が身につくというわけではありません。まずは、リーダーシップのどんなスキルや能力を伸ばしたいのかを明確にすることが大切です。そのためには、次の4ステップで考えてみるとよいでしょう。
step1:リーダーシップを身につけてほしい対象者の「現状」をできるだけ具体的にする
step2:リーダーシップ研修を受けた後の対象者やチームの「理想像」を具体的に描く
step3:現状と理想像を繋げるためにどのようなスキルや能力が必要かを検討する
step4:そのための研修を選定する
ここでは、チームワークと個人の能力がどちらも必要であり、社内の小さな会議室でも簡単に行うことができるリーダーシップ研修として、ペーパータワーを紹介します。
【実施方法】
・20〜30枚程度のA4用紙を用いてタワーを作ります。
・限られた時間内で1番高いタワーを作れたチームの勝利です。
・高さだけを競ってもいいですし、タワーをつくるために使用した紙の枚数を評価の対象に入れてもいいでしょう。
スポーツを取り入れたリーダーシップ研修
ペーパータワー以外にも、リーダーシップ開発のためには、スポーツを取り入れた研修が非常に効果的と言われています。ここではその理由を3つ紹介します。
理由① チームワークの強化
スポーツは、チームワークを促進し、相互依存性を高めるのに適しています。チームスポーツでは、メンバー同士が連携し、共通の目標に向かって努力する必要があります。リーダーシップ研修においてスポーツを取り入れることで、参加者はチームの一員としての役割や責任を理解し、リーダーシップの重要性を実践的に学ぶことができます。
理由② コミュニケーションの向上
スポーツでは、効果的なコミュニケーションが勝利に不可欠です。チームメイトやコーチとのコミュニケーションを通じて、戦術や戦略を共有し、意思疎通を図ることが重要です。スポーツを通じたリーダーシップ研修では、参加者がコミュニケーションスキルを向上させ、チーム内での効果的な指導や連携を学ぶことができます。
理由③ ストレス管理方法の習得
スポーツは、競技中や試合前後など様々な状況でストレスを経験する機会を提供します。リーダーシップ研修においてスポーツを取り入れることで、参加者はストレス管理の重要性を学び、プレッシャーのかかる状況下で冷静さを保ちながらチームを導く方法を習得することができます。
いかがでしたでしょうか。このようにリーダーシップ研修にスポーツを取り入れることで、とても効果的にリーダーシップに必要なスキルや能力を学ぶことができます。
また、数あるスポーツの中でも特に誰もが参加しやすい「ユニバーサルスポーツ」を取り入れることで、性別や世代を超えた多様性のある組織をつくる近道になるでしょう。ユニバーサルスポーツ研修に興味のある方はぜひ下記も参考にしてください。
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